秘密のお茶会 [ 5 ]
秘密のお茶会

5.うららかな午後
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 ぴたり、と額に冷たい手が貼りついた。目の前にあるイルダの顔が、しばし考え込む。
「うん、ほとんど下がったみたい」
 そう言ってアイネから離れていく。
 アイネは女中部屋のベッドの上で、寝間着のまま体を起こしている。西向きの窓からは色づいた光が強く射し込んでくる。真昼から夕刻へと少しずつ移っていく時間帯だ。
「ごめんなさい、イルダさん。仕事のほうは大丈夫?」
「忙しい時期じゃないから、一人くらい欠けたってなんとか回るわ。みんな心配しているけどね」
「ごめんなさい、みんなにも伝えておいて……」
 言い終わるかどうかという瞬間、アイネの口から小さなくしゃみが飛び出した。続いて、震えが背中を上ってくる。
「今日はこのまま寝てなさいよ。ぶり返さなきゃ明日には元気になってるわ」
「……ありがとう。ごめんなさい」
「夕食の時にまた見に来るから」
 イルダはアイネの毛布を直すと、足早に部屋を出ていった。
 一人になったアイネは、ベッドの中でゆっっくり横を向いた。壁紙の継ぎ目にうすく埃がたまっている。元気になったら、手の空いている時を見つけてきれいにしなければ。
 昨日から少しぼんやりしていたが、熱があると気付いたのは今朝のことだった。同室の仲間たちは気遣って休むようにすすめ、家政婦にその旨を伝えたり、薬を持ってきてくれたりした。いくら忙しくないとはいえ、一人ぶんの穴を埋めるのが負担にならないはずはない。せめてもの感謝のしるしに、明日はいつも以上に働こうと思う。
 この家に勤めはじめて一年が経つが、病気で仕事を休むのは初めてだった。体が丈夫なのは使用人として最低限の条件である。伯爵夫妻は寛大な人たちだが、あまり病欠の多い者を雇い続けることはできない。仕事に支障が出るのはもちろん、使用人同士の空気も悪くなってしまう。たいてい執事か家政婦が目をつけて、暇を出してしまうのだ。
 アイネは枕に耳をつけたまま、目を開けたり閉じたりを繰り返した。だるさが残っているのは、半日以上寝ていたせいだろう。このまま熱がぶり返さなければ、明日には仕事に戻れるはずだ。
 イクセルとウィルラートには、今日は誰がお茶を運んでいるのだろう。
 とりとめもなく考えているうちに、目は閉じたままになっていた。眠っているのか、ぼんやりしているだけなのか、自分でもわからない時間が続く。
 ウィルラートは、他の女中がお茶を持ってきたのを見て、何か思ってくれるだろうか。アイネはどうしたの? と訊いてくれるだろうか。風邪で寝込んでいると知ったら、心配してくれるだろうか――。
 いつの間にか、本当に眠っていたらしい。髪に何かが触れるのを感じた時は、すぐに目を開けることができなかった。
 冷たいものが離れたかと思うと、また耳の近くに触れる。そのまま、下ろした髪の先までゆっくりと動いていく。何度かそれが繰り返されるあいだ、アイネは目を閉じたままにしていた。髪に触れる手が冷たくて、でも優しくて、夢のように心地よかったので。
 手――そう、これは誰かの手だ。
 はっきりとそう考えた瞬間、アイネは目を開けた。ぼんやりしたまま寝返りをうち、背を向けていたほうを向く。
「あ、すまない。起こした?」
 西日のまぶしさに目を細め、何度かまばたきしたあと、アイネは飛び起きた。
「ウィ――ウィルラートさま!?」
 今度はウィルラートが慌てる番だった。アイネの顔を見たまま、一歩二歩と後ろに下がっていく。
「いや、ごめん、すぐに出ていくから!」
 途切れがちに叫んだあと、ウィルラートは勢いよく背を向ける。
 同時にアイネは、自分の姿を見下ろした。着ているものはもちろんくたびれた寝間着で、一日ベッドにいたのでかなり乱れていて、下ろした髪も肩や胸の上で好き放題に跳ねている。自分で見ることはできないけれど、顔もきっと寝起きでひどいことになっているはずだ。
 急いで毛布をたぐり寄せ、肩まで引き上げた。ウィルラートは背を向けているのだから、隠そうが直そうが関係ない――というより、先ほどの一瞬ですでに見られてしまったのだが。
 ウィルラートは背を向けたものの、すぐには立ち去ろうとしなかった。けれども彼は何も言わないので、アイネはおずおずと声をかけた。
「ごめんなさい。こちらを向いてください、ウィルラートさま」
 言いながら、片手で髪の横を撫でつける。
 ウィルラートがゆっくりと体の向きを変えた。アイネを見て気まずそうに泳いだ目が、まわりを一周して再びアイネに戻ってきた。
「風邪だって聞いたから、その、ごめん。こんなところへ来たりして」
 彼にしてはめずらしく、言葉に自信がない。
「あ……ありがとうございます」
 また熱が上がってきたのか、頭がぼうっとする。けれど、夢ではない。
 ウィルラートが心配してくれるかと考えてはいたけれど、まさかここまで来てくれるとは思わなかった。この寝室は、アイネを含めて四人の女中が寝泊まりする相部屋である。とうぜん男性が、それも屋敷の令息が来るようなところではない。
 アイネははっとして、部屋の中に視線をめぐらせた。他の三人のベッドが乱れていないか、見られて困るものが置かれていないか確かめる。ウィルラートがここに入ったことを知ったら、仲間たちは大騒ぎするだろう。
 幸いにも部屋はひととおり片付いていて、彼女たちが恥じらいそうなものは一つもなかった。
 とはいえウィルラートは、部屋の様子などまったく気にしていないようだった。
「具合はどう? 熱が高いって聞いたけど」
「も、もう下がりました」
 正確には、下がっていた。ウィルラートがここに現れてから、また上がってきたような気がするのだが。
「無理しないで、横になってて。俺はもう出ていくから」
「あ、ありがとうございます」
 アイネはしどろもどろにうなずいた。
 ウィルラートは出ていくと言ったくせに、なかなか足を動かそうとしない。片時も離れないその視線が、アイネが横たわるのを待っているようで、アイネはためらいながら従った。
 枕に頭をつけると、はるか上にあるウィルラートの顔を見る。
 ウィルラートはまだ動かなかった。アイネの顔をまっすぐに見つめたまま、ゆっくりと近づいてきた。アイネがどきりとした次の瞬間、大きな手が額に触れた。
「やっぱり、まだ熱いな。医者を呼ばなくていいの?」
「ただの風邪ですので。薬を飲んで寝ていれば治ります」
「本当に? 大丈夫?」
「は――はい」
 ウィルラートの手が額を撫でて、垂らした髪をゆっくりと梳いていく。
 アイネは毛布の中で、寝間着をぎゅっと握りしめた。胸が苦しくて、ウィルラートが早く立ち去ってくれないかと願う。けれども同時に、この瞬間が永遠に続けばいいとも思う。
 いつも、そうだ。ウィルラートといると苦しくて逃げたくなるのに、ずっとこのままでいたいとも思ってしまうのだ。
 中腰でアイネを覗き込んでいたウィルラートは、いつの間にかベッドの隣にひざまずいていた。手を伸ばせば届くところに、ウィルラートの黒い瞳がある。規則正しく髪を撫でていた手が、ふと動きを止める。
 アイネの心臓は飛び跳ねたが、視線はウィルラートの瞳から動かなかった。
 ウィルラートの手がアイネを飛び越えて、枕の隣に置かれる。真上から見下ろす形になった顔が、ゆっくりと近づいてくる。
 アイネが気を失うように目を閉じた時、慌ただしい足音が耳に飛び込んできた。
 アイネは夢から覚めるように目を開けた。ウィルラートも足音を聞きつけたらしく、傾けていた体を戻す。
 足音はやむことなく続き、徐々に大きくなっていった。使用人部屋へと続く階段を上り、まっすぐ廊下を走ってくる。落ち着きのない小さな音は、若い娘の――女中のものだろう。
 この部屋へ来る。
「ウィルラートさま!」
 アイネは小声で叫んだ。
 ウィルラートはベッドから飛び離れて左右を見回した。アイネも身を起こして同じようにしたが、女中部屋にある家具といえば、ベッドの他には小さなテーブルが二つだけ。身を隠せるところなどありそうもない。
 そうしているうちに、足音はどんどん近づいてくる。
 ウィルラートが意を決して窓を開けたのと、ドアノブが音を立てて回ったのは、ほとんど同時だった。
「アイネ! 起きてる?」
 部屋に飛び込んできた小柄な女中は、アイネの姿を見る前に叫んだ。
 アイネは開け放しの窓を気にかけながら、ベッドの上で姿勢を直した。そのあいだに闖入者は小走りに駆け寄ってくる。
「起きてるわ。どうしたの、アニシア」
「どうしたのって! お見舞いに来たに決まってるじゃない!」
 小動物のような丸い目と、子どものように膨らんだ頬のアニシアは、見舞いには似つかわしくない声で叫び、アイネのベッドに腰を下ろした。
 アイネはにっこりほほえんだ。
「ありがとう。もう、だいぶ良くなったわ。迷惑をかけてごめんね」
「別にいいわ。ねえ、それより聞いて! さっき厨房でね」
 アニシアはあっさり話を変え、自分の身に起こったことを話し始めた。厨房からお茶を運ぼうとした時、茶器の扱いがなっていないと料理長に注意されたらしい。
「わたし、ちゃんと丁寧にやってたのよ! この間も叱られてうるさかったから、もう二度と言われないようにって! それなのにあの人、いちいち細かいところに目をつけて口を出してきて! 頭にくるわ!」
「がんばってるわね、アニシア」
「そうよ、がんばってるわ。お茶はまだいいけど薪だのお水だの食料だの、いつも重いものばかり持たされて腕が痛くなっちゃうわ。従僕の人たちは近くにいても手伝ってくれないし、気が利かないったら!」
「たいへんね。手が空いている時なら、わたしが手伝ってあげるんだけど」
「アイネはいいのよ、女の子だもの。でも男の人たちは、自分から手を貸してくれなくっちゃ。この間もね――」
 アニシアは貴族ではないが、地方の裕福な家の出で、行儀見習いも兼ねて伯爵家に来たのだという。実家では人を使う立場にいただけに、人に仕えるのは戸惑うことが多いらしい。いやなことがあると、暇を見つけてはアイネに報告に来る。
 アイネはなんの忠告もできないのだが、アニシアは聞いてもらうだけで満足らしい。洗いざらいぶちまけると、少しは気を晴らして仕事に戻っていく。だからアイネも、彼女の言葉の一つ一つにうなずいて、最後まで黙って聞くことにしている。
 ただ今日は、落ち着いて聞いているわけにはいかなかった。アイネは相づちを打ちながら、時おり窓のほうに目をやった。
「ちょっと、聞いてる!? アイネ!」
「聞いてるわ。ごめんね、アニシア」
 アニシアの話はえんえんと続いた。厨房での出来事に始まって、この屋敷の使用人たちがいかに思いやりがないか、自分が慣れない仕事でいかに苦労しているかを説き、早く勤めを終えて実家に帰りたい、そうしたら田舎だけどそこそこ華やかな社交界に出て、大きな屋敷を持っている素敵な男性と結婚して、たくさんの使用人に囲まれて楽に暮らすのだという、アイネが何度も聞いた話に移っていく。
「結婚したら朝はゆっくり寝て、日が高くなってから起きて、時間をかけて着替えるの。昼間はお茶を飲んだりお散歩したりして、夜は……」
「アニシア、ここにいたのね」
 とつぜん割り込んできた声に、アニシアの話が止まる。アイネもアニシアも、声のほうに顔を向けた。
 部屋の扉を開けて、イルダが立っていた。
「階段の掃除が終わってないでしょ。すぐ戻りなさい」
「やったわよ、ちゃんと!」
「あれはやったうちに入らないわ。女中頭が見に来る前にやり直しなさい」
 アニシアは丸い頬をさらに膨らませたが、言われたとおりに立ち上がった。イルダの顔を見ずに部屋から飛び出していく。きっとあとで、イルダは怖い、同じ女中なのに偉そうだと言いに来るに違いない。
 アイネはひとまずほっとした。アニシアが主人一家の悪口を言わないかと、気が気ではなかったのだ。
「あの子ったら、またアイネに愚痴を言いに来たのね。わざわざここまで」
「わたしはかまわないわ、イルダさん。もう具合も良くなったし」
「あんたの問題じゃないの。文句は仕事をやってからにしろってこと……あら?」
 イルダは開け放しの窓に目をとめ、そちらに歩み寄った。
「どうして窓を開けてるの? 寒いでしょ」
「あ――待って」
 アイネはベッドから飛び降り、イルダのほうへ駆け寄った。
 だがすでに遅く、イルダは窓枠に手をかけたまま、外の景色を見て固まっていた。
「ウィルラートさま?」
 アイネはイルダと並んで、窓から下を見下ろした。女中部屋の窓には大きな木の枝が寄り添っており、そこに伯爵家の次男が腰かけていた。
 ウィルラートは笑顔で手をあげた。
「やあ、イルダ」
 イルダはウィルラートを見て、アイネを見て、それからまたウィルラートを見た。
「そこで何をしていらっしゃるんです?」
「いや、それは後で説明するから。とりあえず、中に入れてくれないかな。悪いんだけど」
 イルダはにっこり笑った。すべて悟ったらしかった。
「ここは女中部屋ですわ。お帰りはそのまま下へどうぞ」
「えっ」
「イルダさん!」
 窓を閉めかけた手を、アイネは慌てて止めた。
「待って、ごめんなさい! もう二度としないから、許して」
「あんたはいいのよ。ベッドに戻ってなさい」
「ウィルラートさまを入れてさしあげて。ほんとうに今日だけだから! 今までも、これからも」
「ですって、ウィルラートさま。本当ですか?」
 ウィルラートは木の上で、三回たてつづけにうなずいた。イルダが閉めかけた窓をふたたび開けた。
 ほっとしたのと同時に、アイネはくたりとその場に座り込んだ。また熱が上がってきたような気がする。
 ウィルラートが窓辺に飛び移り、身も軽く中に入ってくると、イルダは彼の耳をつかんで引き下げた。
「いたたたたた」
「それで? 何をしていらっしゃったのかしら、ウィル坊っちゃま?」
「坊っちゃまはやめてくれ! きみは俺と同い年だろう」
「あら、そうでした? 女性の部屋に勝手に入って許されるのは、せいぜい十歳くらいまでだと思いますけれど」
「だから、謝るよ。すまなかった。もう二度と来ないから!」
「イ、イルダさん。放してさしあげて」
 アイネはおずおずと声をかけた。
 親の代から伯爵家に仕え、幼いころから屋敷にいたというイルダは、ウィルラートとは幼なじみのようなものらしい。たまにこんな主従らしからぬやりとりになるのも、気心が知れている証拠なのだろう。見ているアイネのほうがうろたえてしまうが、二人は何の違和感もないようだった。
 アイネの懇願が効いたのかどうか、イルダはようやく、ウィルラートから手を離した。
「今回ばかりはやりすぎです、坊っちゃま。アイネが心配なのはわかりますけど」
「――はい、すみません」
 ウィルラートはしおらしく応えたあと、すばやくアイネにささやいた。
「イルダは知ってたの?」
「は、はい」
 ふたりのやりとりを見つめて、イルダは大きくため息をついた。
「アニシアに見つからなくて良かったわ。あの子にばれたら屋敷じゅうにばれたのとおんなじよ」
「ほんとにごめんなさい、イルダさん」
「アイネもアイネよ。いい? 今度この坊っちゃまが押し入ってきたら、速攻で追い払ってやりなさい。そのあとあたしに言うのよ」
「……押し入ってないけど」
 ウィルラートが小声でつぶやき、イルダににらまれて慌ててうつむいた。
 イルダはふたりを見比べて、もう一度ため息をついた。
「とにかく、もう少し気をつけてくれないと困ります。ばれたらどんなことになるか、ウィルラートさまもご存じでしょう?」
「もちろん」
「だったら、少しは考えて行動してくださいな。いつもあたしが助けに入れるとは限らないんですから」
 ウィルラートはイルダの顔をまじまじと見つめた。それから、ためらいがちに笑顔になった。
「ありがとう、イルダ」
「わかっていただけたならお引き取りください。アイネの熱が上がります」
 ウィルラートはうなずき、体ごとアイネに向き直った。
「じゃあ、ゆっくり休んで。また明日」
「はい」
 アイネがほほえむと、ウィルラートは目を細めた。そのまましばらく動かなかったが、イルダの咳払いにうながされて、ようやく離れていった。
 扉が閉まると、アイネの体は急に重くなった。風邪で寝込むよりもはるかに身にこたえた気がする。そう思った矢先、また寒気がしてくしゃみが出た。
「アイネ、ベッドに入ってなさい」
 イルダがそう言って、開け放しだった窓に手をかけた。
「ありがとう、イルダさん」
 アイネは言ったが、イルダの返事はなかった。窓を閉めて鍵をかけるあいだ、イルダは何も言わず、振り向きもしなかった。
 アイネは少し不安になったが、言われたとおりベッドに戻った。
 毛布を引き寄せて横たわろうとすると、イルダが側に来て、毛布のはしを持ってくれた。早く横になれ、と目が言っている。
「ありがとう」
 アイネはもう一度、言った。枕に頭をつけると、イルダが毛布をかけて、隙間がないように整えてくれた。
「――ウィルラートさまを信じないわけじゃないけどね。あんたももう少し気をつけなさいよ」
 アイネは少し考えた。そして、イルダが言った意味に思い当たると、熱くなった頬を毛布にうずめた。
「……うん」
「あたしは、あんたの味方よ。あんたたち二人じゃなく、あんたのね」
「うん。ありがとう、イルダさん」
 アイネは毛布から顔を出し、イルダに笑いかけた。小さな子どものころから伯爵家にいたイルダ。たくさんの使用人を、女中たちを見て育ったイルダ。彼女の言いたいことは、アイネにもよくわかった。
 イルダの手がアイネの額に触れた。
「熱は上がってないみたいね。夕食ができたら持ってくるから、それまで寝てなさい」
「はい」
 アイネがまた笑うと、イルダもようやくほほえんだ。その顔のまま、ベッドから離れて部屋を出ていく。
 扉が閉まる音を聞きながら、アイネは目を閉じた。イルダは歩き方がきれいなので、足音はほとんど響かない。
 明日は、仕事に戻れるだろう。迷惑をかけたぶん、しっかり働いて取り戻さなければならない。ウィルラートにはお茶を運んでいった時に、今日きてくれたお礼を言おう。
 それから、時間があったら、女中仲間ともお茶をしたい。休ませてもらったお詫びに、アイネがお茶を入れよう。みんなでうわさ話をして、愚痴を聞きあって、厨房で分けてもらったお菓子の批評を語り合う。いつも変わらない、うららかな午後の時間だ。
 窓から入ってくる西日を感じながら、アイネはいつの間にか、眠りに落ちていた。


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